批判に対する批判

タイトル通り、批判に対して批判を行う。見たい人が見てくれたらいい記事。

かといって、その批判の元となっている事柄の擁護だけが目的ではない。批判されがちな点に対する私の考えの主張だ。

 

最初に言いたいことは、批判的思考で物事を見ることそのものは正しく、またその際に出た批判の内容に関して正しいと思うなら賛同を、そうでないならさらなる批判が起きるだけである。投稿主への攻撃を目的としたブログではないことをここに書き記しておきたい。

 

今回私が取り上げたのはこちらのnoteだ。

 

「本当はアセクシャルも同性愛者と同じぐらいいたのに・・・電通の「13人に1人はLGBT」という“自覚無きAce差別”」

https://note.com/tomokihino/n/n8233f0d2d560

 

目次は以下の通りだ

電通により“水増し”されたものと“無視”されたものと実際には「同性愛者:0.7%」「無性愛者:0.8%」だった
・Ace界隈も「アロマンティック」を無視しないようにしなければならない
・デミセクシャルとフレイセクシャルの扱いの差
・マイノリティだからと言って一枚岩とは限らない

 

 

このなかからまず「電通により“水増し”されたものと“無視”されたものと実際には「同性愛者:0.7%」「無性愛者:0.8%」だった」について触れる前に、調査の振り返りと私の感想を載せたいと思う。

LGBTは13人に1人(7.6%)と話題にもなった報告を出した電通調査、その内容とは。

https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2015/0423-004032.html

「本調査では、セクシュアリティを「身体の性別」、「心の性別」(自分は男だ、女だという性自認)、「好きになる相手・恋愛対象の相手の性別」の3つの組み合わせで分類し、DDL独自の「セクシュアリティマップ(※4)」(下図参照)を元に、ストレート(異性愛者で、身体と心の性別が一致している人)セクシュアリティである図内②(ストレート男性)と、図内⑩(ストレート女性)と答えた方以外をLGBT層と規定しています。」(記事引用)

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「図:電通ダイバーシティ・ラボ制作の「セクシュアリティマップ」」(引用)

 

カラダの性に含まれていない「インターセックス 、DSDs(性分化疾患)」と呼ばれる、生まれつき体の性別が女性、男性と一概に言い切れない人たちのことを不可視化していると言えなくはない。LGBTQ+に含めていいかと言う論争がどこかでありそうだが、少なくとも心の性別は持っているだろうし、心の性別と好きになる性が一致しない人もいるだろう。インターセックス 、DSDsを無視したと言われても仕方のないと言えなくもない。

次に心の性別が男女2通りしかないことだ。LGBTのTにあたるトランスジェンダーアンブレラの中には沢山の区分けがある。男女の区別で言い切れるものを「ジェンダーバイナリー」男女の区別で言い切れないものを「ノンバイナリー」や「Aジェンダージェンダーフルイディティ」などなどだ。これらは全て無視され、代表のトランスジェンダー女性、トランスジェンダー男性のみを指している。

最後に好きになる相手が男女、またはどちらかの選択肢しかない。トランスジェンダーが好きという人がいるにも拘らず、それは反映されていない。

そして、好きになる相手はいない、恋愛的と性的が分かれてないなどたくさんいいたいことはある。それらを踏まえてこれらから推測できることは「LGBTで代表とさせるものを分かりやすく12個に分けた選択肢にして調査をしよう」という意図があったであろうということだ。

 

つまりどういうことか、研究の際の調査項目を煩雑にするとどうなるか、デメリットや問題点をまず述べようと思う。

①研究目的に沿わない質問の選択肢はなるべく減らすべきでたる。LGBT(市場調査)の研究と述べている時点で求めているデータはLGBTのデータなのだ。

トランスジェンダーの中にノンバイナリーたちは含まれないのかと疑問はよぎるが、ノンバイナリー達の恋愛対象がわかったところでそれは「LGB」ではなくなってしまうのではないか、というものだ。

例えば、MtXと男性のカップルはゲイカップルだろうか?私は疑問に思う。この2人をゲイカップルと称すれば、ノンバイナリージェンダーの人は男だということになってしまう。ではなんと表記されるか?というと『セクマイカップル』だ。今回の調査はLGBT調査でありセクマイカップルの調査ではなかった。もっと正しい言い方をすればLGBTの調査であってセクシャルマイノリティの調査ではなかった。よって、ノンバイナリー等を選択肢の候補に入れるのは難しかったと考える。

LGBTアセクシュアルが含まれる可能性はあるが、それを加えれば選択肢が16個に増える。また、アセクシュアルを取り扱うにあたり必要なことは「性愛的感情を持っていないが恋愛感情を持つ」人の存在だ。つまり、全選択肢に「恋愛感情で好きになる相手」「性愛感情で好きになる相手」を付け加えなければならなくなり、16×2の32項目となる。その時点で回答者には多すぎる情報量だ。先に述べた通り「研究内容に沿わない質問の選択肢はなるべく減らすべき」という点から考えると32項目もあってはどれが自分に当てはまるのかを回答するまでにかなりの時間を要する。これも問題点の一つだ。

③現状のセクマイ界隈ですら「恋愛感情」と「性愛感情」を分ける考え方は浸透していないにも拘らずその選択肢を用意することは、回答者の混乱につながる。それは研究者として避けたい事態だろう。その上恋愛では両性を、性愛では男性を、とした場合どこまでが「ゲイ」になるのか論争が巻き起こるだろう。

 

つまり、図示した選択肢「以外」の人たちを不可視化したいのではなく、調査が煩雑になること、目的から外れた調査になること、これらの理由から電通調査ではこの"12項目"のみを研究調査に使用したと考えるのが妥当である。

 

また記事の最後の注釈から引用したい。

「※4  セクシュアリティマップは、簡易的にセクシュアリティを説明するために制作したもので、すべてのセクシュアリティをカバーするものではありません。例えば、「心の性別」が男女どちらかに規定されない人々も存在します。今回は調査上「その他」として集計しています。」(記事引用)

と載せられている。つまり、その他のセクシャリティとしてアセクシャルも集計の中に入っている可能性だって十分にあり得るわけです。今回はLGBTの市場規模調査のためLGBT等の収集結果は公開されていません。それを公開しないのはおそらく「調査結果のうち、市場効果のデータを公開します、個人情報が流出しないよう云々」と倫理的配慮に書かれていたのでしょう。そこは十分納得できます。

 

次に調査方法についての確認です。

<事前スクリーニング調査の概要>
 ・調査対象:20~59歳の個人69,989人
 ・調査対象エリア:全国
 ・調査時期:2015年4月7日~8日
 ・調査手法:インターネット調査

<「電通LGBT調査2015」の概要>
 ・調査対象:20~59歳の個人900人(LGBT層該当者500人/ストレート該当者400人)
 ・調査対象エリア:全国
 ・調査時期:2015年4月9日~13日
 ・調査手法:インターネット調査      (記事引用)

 

こちらからわかる通り、インターネット調査で行われています。インターネット調査の良いところは「誰もが気軽に回答できること」ですが、デメリットは「その調査に興味のある人間が回答すること」です。何が問題かというと、無作為抽出のように見えて、偏りが生じやすいということです。

またスクリーニングの年齢から分かる通り、20〜59歳を対象にスクリーニングをとってますが、実際の調査ってどうだったんでしょうか。回答したい人が回答するスタイルなのであれば、セクマイ界隈には若い子もいっぱいいますし、逆に年齢が高くなるとよくわからん調査に答えなくても……となる可能性があります。その結果セクシャルマイノリティ の確率が13人に1人になったとしても不思議ではありません。

 

 

また私が述べたいものがあります。「2019.12.11福岡新聞夕刊」から「LGBT10人に1人」です。

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回答者は「34万8千人」調査実施者はLGBT総合研究所。 https://www.daiko.co.jp/dwp/wp-content/uploads/2019/11/191126_Release.pdf

 

こちらでの結果は次のようになっています。

性的指向

異性愛93.0%

両性愛2.8%

エスチョニング1.4%

同性愛0.9%

アセクシュアル0.9%

(恋愛感情を抱かない←正しくはない)

その他1.0%

 

性自認

シスジェンダー93.9%

Xジェンダー2.5%

トランスジェンダ1.8%

エスチョニング1.2%

その他0.6%

 

調査方法は以下の通り

■調査設計概要
<LGBT 意識行動調査 2019(事前調査)の概要> ・調査対象:20~69 歳の個人 428,036 名(うち有効回答数:347,816 名) ※集計にあたっては 20~69 歳男女の人口構成比に応じたウエイトバック集計を実施。 ・調査対象エリア:全国
・調査時期:2019 年 4 月 16 日~5 月 17 日
・調査手法:インターネット調査
<「LGBT に関する生活意識調査」の概要>
・調査対象:20~69 歳の個人 ・割付設計:計 2,578 サンプル
・調査対象エリア:全国
・調査時期:2019 年 4 月 24 日~5 月 20 日 ・調査手法:インターネット調査

 

こちらもインターネット調査である。先にも申し上げた通りの偏りが生じている可能性があることは留意の上次に進んでいただきたい。

またURLにも載せたが、調査結果が大変面白いのでお暇があればぜひ見ていただきたい。

 

では次に、某氏が比較に載せていたぺーじから。

http://www.ipss.go.jp/projects/j/SOGI/index.asp

こちらでは調査書類を一斉に送り、回答は返送とインターネットからの2通りの方法がありました。大阪市の住基台帳から15000人の無作為抽出による調査でした。

この調査方法のみ「所在地の中から無作為抽出」を行なっていることが記載されています。そのためインターネットに明るくない層からの回答も期待できます。逆に言えば、LGBTに詳しくない当事者やインターネットだと回答しない層も回答することになるということです。インターネットに回答しない層になぜ下線を引いたかというと、調査に興味のある人間は積極的に回答します。そのため、インターネットのような「ページを開き、回答し、送信する」という作業があるため、非当事者からの回答が期待できない可能性があります。しかし郵送で届いたものであれば話は別です。パソコンを用意せずとも目の前にあるものに回答をすれば良いですし、お礼状を兼ねた督促状も贈られたとのことで、インターネット調査では回答しない層も回答するに至った可能性が大いにあります。

またインターネットで回答することも可能ですが、カミングアウトしてない当事者が家族で自分だけインターネット回答をしたりするでしょうか……?家族と一緒に無難な回答を書いて返送する可能性を否定することができません(あるいは家族ごと回答しない可能性もあります)。

実際に有効回答数は15000のうち4285だったそうです。

 

さて、どのような結果になったでしょうか。

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異性愛者83.2%

同性愛者0.7%

両性愛者1.4%

アセクシュアル0.8%

決めたくない・決めてない5.2%

質問の意味がわからない7.5%

無回答1.1%

 

このことから分かるのはまず

アセクシュアル割合がほぼ一緒(0.9%、0.8%、海外の論文では1%とも)であること

・同性愛者の割合もほぼ一緒(0.9%、0.7%)

両性愛者の割合には疑問が残る(2.8%と1.4%では倍違うため)

 

つまり、◯人に1人のような言い方をしているデータだからといって「水増し」をしているとは考えづらいのではないか?ということだ(ただしトランスとLGB等が重複する可能性があるので何を根拠に10人に1人になるのかはわかっていないが、異性愛者以外、シスジェンダー以外、その他を除外した数を足すと11.5%になるからではないかと思ってる。)

つまり、アセクシャルもちゃんと計算に入れてくれてるわけだ。

 

もう一度問う。この結果を見て、水増しだと思うか?それは見た人の判断次第だ。

 

 

さて、ここからが本題です。

某氏は「電通は、セクマイを「商売道具」にする気だった、というのは果たして“被害妄想”だろうか?」と述べています。

これに対する私の回答は「LGBTは非生産的」という言葉から「(子を産めないことで)非生産的だというのなら、実際に生きて生活している人たちの消費を見てみましょう。わかりやすく名前をつけて世にアピールしましょう」というのが目的だったのではないかと推測しています。

「商売道具」というが、LGBT当事者や支援者が消費した経済のデータを調べるだけでどうやって金儲けをするのか?甚だ疑問である。そこから急に商売道具にするつもりだ!と突っかかるにはあまりに話が飛び過ぎている。某氏はこの部分でしかこの話題に触れてない。

批判は確かに批判として受け止められるべきだ。しかしその「商売道具」という発想はあまりにも突飛すぎる。

f:id:A_yahiro:20200731082228j:image(上記電通調査より引用)

見づらいかもしれないが、今回のLGBT層の消費市場規模の表だ。電通はこのなかから何をどうやって「商品道具」と化するのか、ご教示いただきたい。電通は広告代理店だ。そしてその広告代理店がLGBTのことを扱うと「商品道具にするな」と声を上げるものが出てくるのであろうか?私は不思議でならない。理解が追いつかないのでもし見られたらanswerが欲しいところです。

 

さて、では次に「無視されたもの」について触れますね。

 

これはまあ「アセクシュアル電通が無視したのではなく定義が難しく、選択肢を大量に増やすことになるために仕方なく調査対象から外した」と私は考えてるので答えが出ないですね。某氏が受け取った誹謗中傷に関しては存じ上げませんし……。

 

これらの結果を見て純粋に思うことは、アセクシュアルはずっと1%いると言われ続けてましたからね、実際に結果として数値に出ていることが嬉しいですね。

 

最後に復習としてもう一度わかりやすく記載しますが電通は「LGBTの少子市場規模」の調査をしており、他の研究は「LGBTQ+(セクシャルマイノリティ )の人数についての研究」ですから、やることも目的も手段も全て異なるのです。

例えば「スマホの外出時の使用頻度を調べる研究」と「スマホの所持率の研究」があったとします。

スマホの外出時の使用頻度を調べるため、専業主婦や在宅仕事の人は調査対象者から外します」といった場合差別だ!と声を上げますか?この調査は何を調べたいのでしょう?学生や、仕事で働きに外に出る人たちがどれだけ通信料を必要とするのかを知りたいからこの研究をするのかもしれません。その場合、在宅でWi-Fiを使っていることの多い人たちを調査候補に入れても意味がないですよね?

逆に「スマホの所持率の研究」の場合、どれだけの人が持っているのか調べるだけで、除外される人は少ない(ホームレスとかの住所不定くらい)ですよね。

このように、研究には研究に対する目的があり、その目的のための手段があります。そこを見ずに数値だけを見て批判をするのは少し早計ではないでしょうか、というのが私の意見です。

 

さて残りの3つ(以下)ですが……

・Ace界隈も「アロマンティック」を無視しないようにしなければならない

そもそもアセクシュアルは「無視されている」ことが少ないということを前提で見なければなりません。アセクシュアルは……アロマンティックもですが、定義が大変難しいのです。よく悪魔の証明に例えられますが、アロマアセクを扱わない人たちのほとんどがまず「無知」であることが多いと認識しなければなりません。

アセクシュアルの本ですら昨年日本国内で発行されたばかりです。これからどんどん広まっていく最中なんですよね、なので「無視しないで!」というよりも「こんなセクシャルマイノリティもあるんだよ、ぜひ広まってくれると嬉しいな!」のスタンスでなければ変な人がなんか変なこと言ってきた、という印象にしかなりません。

「愛する権利」を謳うLGBと対抗するように存在するのが「愛さない権利」を主張する私たちアセクシュアルです。最初から居心地の良い場所ではありません。居場所を作るのは私たちです。それを肝に銘じて活動基盤を作っていけたらと私は考えています。

しかしもっと難しいのがアロマンティックです。社会は性的指向と恋愛指向を分けて考える人、分けて考えることができる人がとても少ないため、周知がとても大変です。正直アセクシュアルよりも壁が高いようにも思います。ぜひ手を取り合っていきたいとおもいますね。


デミセクシャルとフレイセクシャルの扱いの差

こちらに関してはどうでしょう。デミセクシュアルは最近認知が上がってきましたね。「それが当たり前の恋愛の発展でしょ?」なんて言われがちではありますが、他のセクシャリティの方から理解されやすい内容だから広まった、といっても過言ではないかと思います。

ではフレイセクシャルとは何か?簡単に言えばデミの逆で、親しくなればなるほど性的欲求がむかなくなるセクシャルマイノリティの一つであるとのこと。おそらく想像がつかない人も多いでしょう。そりゃ広まらないよなと正直思ってしまいます。

そしてもう一つ、最初から性的欲求が他者に向いてる状態があるってことはアセクシャルアンブレラに入るのか否か、判断しかねると私は考えます。

フレイセクシャルが知られたのはアセクシュアルよりももっと後になってからだと思いますし、周知活動をさらに増やしていくべきなのかもしれませんね。

 

では最後に。
マイノリティだからと言って一枚岩とは限らない

 

簡単に言えば、ブロックされたから言い訳してるよう見えるページだ。いるのかこのページは。この方を「一枚岩とは限らない」と紹介する必要はあったのだろうか?

正直被害者ぶって「可哀想っていって慰めてくれ」といっているようにしか見えない。

意見のすれ違いでブロックなんてTwitterではよくあることだ。私は昔めちゃくちゃ褒め称えてた顔がいいMtFをちょっとした言動が無理でブロックしたことがある。私は自衛でブロックを用いるので、ブロックに対してそんなに深く考えていない。ブロックに過敏に反応しすぎではないか?

 

私たちは、私たちなりの正義・思考・主義主張などで行動し、呟き、身を守るためなら自衛をしている。何をするかも自由なこの場所で、自分の思考や主義主張と合わないからという理由でブロックしているのに、後からぐちぐち言われるのはちょっと見ていて疲れる。開いた口が塞がらない。なので、この項目に関してはこれ以上述べない。

 

 さて、長々と話してしまった。煩雑になりましたが、以上になります。突発的に書いてすみませんでした。