月経というもの

女の体を持つと月に1度悩まされる月経という存在。私にとってはあまりにも憎らしい存在だ。

以前かかった病院では子宮内膜症などの症状も見られないとのことでピルなどの処方は無し、MtF御用達のサイトでもピルは1ヶ月周期のものがほとんど(全て網羅して見てるわけではないです)で、数ヶ月飲んで生理痛が軽くなったり経血が減ったりと効果を感じることはできたが、性別違和を持つ自分には女性ホルモンの摂取を続ける、という行為そのものにストレスを感じているように思い、一度中断しているところだ。

 

今月は普段よりも体調は良いし痛みも少ないけどやっぱりしんどいなぁ、そんなことを考えていた昼頃、友人のキャスでお喋りをして気を紛らわせ、映画を見て気を紛らわせていた。痛いのならいっそ寝込むが、動けるのなら月経のことを考えなければ良い、そう思っていた。

そんなとき、彼女が「会いに行っていい?」と訪ねてきた。いいよと言ってドアチェーンを外しに行くと目眩がしてベッドで待機した。動いたせいか痛みが増し、寒いような暑いような感覚がした。頭痛もし、じっとしていられず唸る私を頭を撫でたりしてなぐさめてくれた。

 

痛みは増していった、彼女が目の前にいるのに月経のことでぐるぐると頭がいっぱいになっていく。

つらかった。言語化することもできない嫌悪感や不安感、それらに押しつぶされそうになる自分、止まらない涙、目の前にいる彼女への申し訳なさ。

結局「1人にしてほしい、放っておいてほしい」と追い返してしまった。

 

追い返した後も涙が止まらず、頓服の薬を飲んでひとしきり泣いた後疲れて寝た。割とすっきりとした。

そこで考えていた。私にとって月経とはなんだろうか、と。

 

正直悪魔みたいなものだ。必要性も感じていないのに1週間も血を流し続ける。月経前は高温期でもあり体温が高くて体調不良を覚え、月経後は月経への嫌悪感で精神が潰れている。1ヶ月のほとんどが体調不良のようなものだ。こんなもの、性別違和がなくても嫌に決まってる。

 

月経とは女性の象徴だ。そして、妊娠の可能性を示すものだ。私にとってそれは、吐き気がするほど嫌いなものだ。自分と血の繋がった子供など欲しくもないし、こんな臓器売るか生体移植か研究にでも使ってもらった方が有意義だ。

 

だが、その思考がなぜ急激に生じたのか。

彼女と私のジェンダー観や体の性別に関係するだろう。

 

私と彼女は戸籍は男女別だ、だから結婚ができる。だが彼女は男性の体を持ち、つらく感じており、私は女性の体を持ちつらく感じている。しかし、彼女はGIDの診断をとっくにもらっている。私は学校や家裁に出すための改名のための診断書の作成のため、GIDおよびGDの診断のために通院中である。

 

MtFFtMならわかるかもしれないが……女性ホルモン剤の入手はかなり簡単だ。医者に行かなくても手に入る。それと比べて男性ホルモン剤、特に経口摂取できるものなどほとんど需要もないため流通していない。医者にかかり、診断してもらい、治療を受けなければ男性の体に近づけることすらできないのだ。ボーイッシュな女の子の域を出るのは簡単なことではない。そして、ここで問題になってくるのが私の性自認はAジェンダーだということだ。つまりロールモデルがないのだ。

 

最近、かんざしの一本挿をしたいからまた髪を伸ばそうかなぁなどと考えている。だが周囲から見ればそれはただの女だ。では髪を短くしないといけないのかといえば、それじゃFtMじゃないかと心がささやく。

彼女は自分でホルモン剤を飲んでいる。髪を伸ばして染めてお化粧をして、どんどんなりたい自分になっている。では私はどうだ?立ち止まっているまま何も進めていないのだ。目指す先がない。この体では都合よく婦人科疾患にでもかかってしまわないかと祈りながら、嫌悪と向き合い続けることしかできないのだ。

きっと、それに気付いてしまった。それがきっかけで、感情失禁を起こした。ただただ涙が止まらなくなった。思考がごちゃごちゃになり目の前が真っ暗になったように感じた。本気で死にたくなった。リストカット用に安全シートを切り外してあるカミソリに手を伸ばしかけた。体に傷を付けて自分を慰めようとした。でもそれはきっと最適解じゃない。

 

ゆっくり進んでいこう、本当の名前を「さつき」にするために動こう。今出来ることはそれしかないのだから。